目に見えない、人間同士の「つながり」の話
もうずいぶん前、通勤中に駅構内で見かけた光景である。
私の少し前を歩いている、ひとりの男性に目が留まった。
その男性、思わず見てぎょっとしたのだが・・・首がない(?)
いや、正確には、頭をうんと垂れた状態で、私と同じ方向に向かって歩いていたので、後ろにいる私には首がない人に見えただけだった。
なんだー・・・よかったー・・・びっくりしたー・・・。
胴体だけ歩いてるって、笑えないホラーだよ。
ちょっと変わった人なのかな。
はたまた、ひどく落ち込んでいるのだろうか。
少し病んでいる感じに見えたが、よく分からなかった。
そして、その人のさらに斜め数歩前を歩いている男性に、今度は目が行った。
数歩どころか、もっと離れていたかもしれない。
驚いたのは、離れて歩いていて、互いに視線を交わしてないにもかかわらず、この二人が「連れ」だと分かったことである。
この感じ、何なのだろう。見ていて本当に不思議な気持ちになった。
こういう時、人間の醸しだす波長というのは、つくづく凄いなと思う。
二人は互いを見ることも気に掛けることもなく、おのおの黙々と同じ方向へ歩いていった。
はたして仲が良いのか悪いのかは分からない。
どちらであっても、この二人には「つながり」があり、全くのアカの他人の私にも、それは伝わってきたのだ。
それだけの話。
後ろ姿を見送っただけで、オチは何もないエピソードである。
こういう話に共感する人はいるのだろうか。
私の独りよがりかしらん。
もう数年前に見た光景だけれど、ずーっと心に残っていたので書いてみました。
読んで頂きありがとうございます。