瑠璃色つらつら日記

日常のいろんな気付きやシアワセを書いています。映画、音楽、舞台、アニメなど、好きなもの多すぎて困っちゃう。

痴漢の思い出さえ吹っ飛んだ、素晴らしい映画「中国の鳥人」三池崇史監督

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「中国の鳥人」を初めて観たのは、もう20年以上前になる。

今は無き名古屋のミニシアター「ゴールドシルバー劇場」で初公開された時だった。

 

「ゴールドシルバー劇場」・・・もう本当に大好きな映画館で、あしげく通った思い出の場所。私にとっては、まるでニューシネマパラダイスのような存在だった。(そういえば映画「ニューシネマパラダイス」もここで観たんだっけ)

 

当時はこの映画の監督、三池崇史さんの名前も知らず、ただ予告編の映像に惹かれて観に行ったのだった。

 

実はこの日の観覧中、なんと痴漢に会ってしまった!

その日は一人だったので、目を付けられてしまったのだろう(まだ若かったし)。

劇場内は数名のお客さんしかおらずガラ空き状態。にもかかわらず、そのサラリーマン風の中年男性は私のすぐ隣に座ってきた!

 

こいつなんか変・・・と思いつつも上映開始。

しばらくすると、やはりお決まりの行為をしてきたので、勇気を振り絞って「止めてくれませんか?」と言った。

どんな怖い反応が返ってくるかと、心臓バクバク状態だったが、せっかくの映画鑑賞の時間を台無しにされたくなかった。

だが意外にも、その痴漢の反応はおとなしく、「あ、はい」と間の抜けた返事をしてきた。

あれ、こいつ痴漢行為しときながら怖気付いてる?

そこですかさず「他の席へ行ってくれません?」と言い返してみた。

するとその男は、素直に私から離れていったのである。

 

劇場を出たのか、他の席で映画を見続けたのかは分からない。

気の小さい痴漢で良かった・・・まだ上映開始間もないタイミングで良かった・・・

 

こんな出来事があった後、普通なら見た気がしないまま終わってしまう、というのがパターンだろう。

しかし三池ワールドは、そんな私の傷心をいとも簡単に吹き飛ばし、喜びで満たしてくれた。

 

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映画の舞台は中国雲南省の秘境の村。そこには鳥人伝説があり、電気のない生活を送る人々が住んでいる。

そんな場所に、ヒスイの鉱脈を求めて日本人ビジネスマンの和田さんが向かう。

道中、訳あって同行することになったヤクザの氏家さん、現地通訳の沈さん、この全く共通点のない男性3人を中心に物語は進んでゆく。

 

和田さんと氏家さんはギクシャクしながらも、序盤から面白いデコボココンビぶりを見せてくれる。それをなだめる沈さんは、腰が低く日本語も堪能なのだが、なぜか二人を「貴様」と連呼する(どうやら漢字から「貴様」を日本語の最上級の敬称と勘違いしているらしい)。

そこかしこにユーモアが溢れていて楽しい。

 

そして、やっとこさ到着した目的の村で、鳥の羽を付けて遊びまわる子供たちと一人の少女に出会う。

訛りのある英語でアニーローリーを口ずさむ少女、その歌と声に惹かれる和田さん。

なぜ外部の人間との交流がないこの秘境の地で、彼女はこの歌を知っているのか。

それがこの村の鳥人伝説を解き明かす鍵となっていく。

そして次第に二人の日本人は、この村にすっかり馴染んでいくのだった。

 

日本に帰国する前、二人は惜しむように背中に鳥の羽を付け、子供のように叫びながら崖から飛ぶ。

失敗して崖から這い上がるシーンは、可笑しくも胸にグッとくる。

村に来たことで、本来の自分に目覚めてしまった氏家さんは、その後ヤクザから足を洗い、本当に村の住人になってしまった。

 

ファンタジックな一面があるが、決してさわやか一色ではないし、お涙頂戴映画でもない。

たっぷりのユーモアとバイオレンスをお供に、冒険して帰ってきたような気持ちで映画館を出た。

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これが私にとって初めての三池ワールドの思い出である。

映画があまりにも素晴らしすぎて、おかげで痴漢の思い出はコバンザメ程度の付属品のように残っているだけになった(笑)

 

それにしても、日本の痴漢は意外にも気の小さい輩が多い(と知るのはその後、さらに複数回の経験を積んでからのことだが。自慢にならない経験だよぅ。)

声を上げたり、顔を思い切り見てやると、びっくりして離れていくのである。

多分、何も言えなさそうな女性を見定めてやっているのだろう。

つまりは小学生の弱い者イジメと変わらない。

心のどこかに、相手を支配して満足したい、という思いがあるのではないか。

 

てか、ただ物理的に人の体を触っても、心が伴っていない接触なんて、本当の意味で満足は出来てないのではないか。

痴漢の話が変に哲学っぽくなってきたので、ここら辺でやめておこう。

私が男性心理をよく分かってないだけかもしれないし・・・(笑)

読んで頂きありがとうございます。