ショートストーリー カフェで出会った女性
その女性の隣の席が空いていたので、座らせてもらった。
買い物帰りだったのか、その人は大きなキャリーケースを横に携えていた。
それを自分の方に引寄せ、私が通るスペースを空けてくれる気遣い。
かなり背中の曲がった、80代以上に見える女性だった。
一言お礼を言い、私はいつも通りPC入力に集中し始めた。
しばらく経ってから、女性は席を立ち帰ろうと準備していた。
動くテンポが、いかにもご高齢という感じでゆっくり。
人間観察の好きな私は、ふと、その人のギャップ萌え部分に気付いてしまった。
服装がめちゃめちゃ素敵・・・
下は黒のパンツ、上は黒地に刺繍模様の入ったキルトジャケット姿だった。
言葉で聞くと普通だけれど、「おばあちゃんのファッション」という印象ではなかった。
特に目を引いたのはキルトジャケット。
キルティング素材って、着こなすのが難しいと思う。
下手な着方をするとダサくなりかねないので、私はいつも選ぶのを避けていた。
それを見事に着こなしていたのだ。
それに刺繍模様もきれい。
おしゃれの上級者を見るような目で、その人の後ろ姿を見送った。
背中は曲がっていても、宝塚歌劇団のような気品があり、本当に素敵だった。
とても私的な見解ではあるけれど、
おしゃれを知っている人、ちゃんと楽しんでいる人だと思った。
伸びやかさが見え隠れする人生の先輩に出会うと、嬉しくなってしまう。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
<今日の1枚>
スタバ 神戸磯上通り店より。
夕暮れ時の雨の街をカフェから眺める時間は、とても贅沢~♪